マッチは首を横に振る。
「二人が一緒にやっていくためには、俺の強さを見せることが必要だ。UAHのお前にも負けない対等な男だってとこを見せとかないとな。勝つさ。でも、戦うってのは常に危険と隣り合わせだ。絶対はない。簡単にやられるような男がお前を守ったり、おっさんを助けたりできるわけがない」
満面に笑みを浮かべ、隠れる場所を指差すハナビ。マッチは後ろ髪を引かれるような思いをしながら隠れる。ハナビはポケットから靴下を取り出して、中に砂や石を入れ始める。不審な行動をしているハナビを見て、遠くからポリスがゆっくりと近づいてくる。
「おい、そこのお前!」
ポリスに声をかけられ、ハナビは首にかけている指輪をぐっと握り締めてから指輪にキスをして、ゆらりと立ち上がる。
「一体、何をしてたんだ」
ハナビはニヤリと笑うと、ポリスに向かってダッシュした。銃を構え、躊躇なく引き金を引くポリス。ハナビはそれよりも一瞬早く先ほどの靴下を投げつけ、体を沈み込ませた。靴下が銃弾で砕け散り、ハナビは地面を這うようにポリスの股の下を駆け抜ける。ハナビを見失って呆然としているポリスの背中に飛びつき首を締めるハナビ。ポリスは状況を理解できないままに暴れるが、やがて倒れこんでしまった。ハナビは倒れたポリスから銃を奪い、ポケットから袋を取り出して、ポリスの体を探りながら役に立ちそうなものを袋に放り込んでいく。袋の口を閉めて、マッチが隠れているところに戻ってきたハナビ。
「行くぞ!」
マッチは慌てて、走り去るハナビの後を追う。
ハナビは通りに並ぶ家のドアを開けて中に入る。中には誰もいない。どうやら、しばらく誰も住んでいないようだ。
「急げ!」
マッチが家の中に入ると、ドアを閉めて二階に上がる。
「この家には誰も住んでいない。憶えておけ。いいか、お前がもっと走れたら、もっと遠くに逃げられたんだ。もっと速く走れるようになったら、おっさんのところにより速く着けるんだ。時間が勝敗を決めることだってあるんだ。速く動けば、自分に時間が出来る。時間を味方につけろ。パイロキネシスの力だけで勝てると思うなよ」
ハナビ、違うよ。火を出したのは僕だけど、どうしてあの時火が出たのか分からない。僕には火を出す能力はない。僕の本当の能力を知ったら、ハナビはきっと僕達の敵になる…でも、その時ハナビはいなくなってしまう…。
「そんなに悲しそうな顔をするんじゃない。お前、打たれ弱いのか?俺が鍛えてやるから、安心してろ。とにかく今は逃げるぞ。こないだと同じように屋根を行く。いいか、前にうまくいったからって気を抜くなよ」
ハナビの部屋でパンを食べているハナビとマッチ。
「靴下にものを入れて振り回すと凶器になる。『狼よさらば』っていう昔の映画で観たんだ。映画だと中にコイン入れてたけどな。あれ使えば、お前の力でもあいつらを殺すことが出来る。さっきのポリスは殺す必要がなかったから使わなかった。後ろから締めて気絶させただけだ。安心しろ」
口を尖らせているマッチ。ハナビ、あいつらは敵だよ。なんで殺さないの。殺せるときに一人でも多く殺さないと。気を抜いてるのはハナビだ。そのうち、奴等に殺されちゃうよ。
「なんだ、不満なのか?お前、案外悪人だな。殺さなくていいときは、殺さない。必要な時は殺す。みんなが仲良くできれば、それにこしたことはない。甘いか?でも、奴等と同じことをすることは、俺にとって何の意味もない」
ハナビにとって、僕は殺す必要がないのだろうか…。
「さっき、ポリスが俺を見失ったのが分かったか?」
頷くマッチ。
「見てて何か気がつかなかったか?」
?
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