マッチは首を横に振った。
「ていうか、ここまで話分かってるか?」
マッチは頷いた。
「人の改造だよ。他の国に負けない人間にする」
ハナビは自分の頭に指を当て
「まずは頭だ。考えることから体を動かすことまで基礎的な力、記憶の量とスピードアップだ。脳みその表面の面積を広げ、伝達速度を速くする。そういうことを実現する薬の開発。実験とかもひどかったらしい。東の大国の近くにやりたい放題で世界中から嫌われている国があった。この国がよその国から人を連れてくるんだよ。その連れてこられた人たちを実験台にしてたんだ。脳みそのシワを増やし、脳みそ自体をでかくする。そんな頭を支えるために体をでかく、筋肉を強くする。そんな薬が開発された」
マッチが顔をしかめる。
「オリンピックっていう、どんだけ速く走るか、高く飛ぶか、遠くへ投げるかなんていうことをたくさんの国が競争していたお祭りがあったんだけど、東の大国は全部一等賞を取るようになった。その薬は遺伝子っつう子供も同じにしちまうものも変えていってしまった。そうして、あのご主人様たちができあがったんだ。ばけもんだよ。あいつら、ばけもんだよな。お前もそう思うだろ?」
マッチは大きく頷く。
「人の改造とともにスパコンを使ってあいつらがやったことは圧倒的強さを持つバトルスーツの開発。東の島国が開発していたロボット技術を応用して人のパワーの何倍もの力をだし、西の国が開発していた衝撃吸収の素材を使ったバトルスーツ。すっげー破壊力をもった銃。ぶっ壊す能力をちょー極めた飛行戦艦。そして、すんげー正確なミサイル。ミサイルってのは飛んでく爆弾だ。そしてあいつらは西の大国から攻めていった。圧倒的だったらしい。すんげー数のミサイルで爆破し、相手のミサイルは撃ち落とし、飛行戦艦でとにかく破壊していく。残った連中もバトルスーツを着た兵士が殺していく。戦争じゃなくて、破壊だったらしい。西の大国をぶっ潰した後は、逆らう国は同じようにぶっ潰す。降伏した国の人は奴隷にする。あいつらの目的は奴隷じゃなくて、土地と資源。全部ぶっ潰しても何の問題もなかったんだ。ひでえだろ」
マッチは顔をしかめる。
「でも、ロボット作るよりも奴隷使った方が何かと便利なもんだから、奴隷は生き残ることができた。ところが、逆らう奴も出てくる。そんな奴はすぐに殺された。奴隷を完全に支配するために、あいつらは奴隷の頭にチップを埋め込んだ。このチップがあいつらのスパコンにいろんなデータを送りやがんだ。居場所から、健康状態とかいろいろだ。計算外だったのは、奴隷も子供を生む。その子供たちも管理しなきゃならない。あいつらはチップを改良して、妊娠したら分かるようにした。妊娠した女は集めて施設に入れる。赤ん坊が生まれたら、育てる施設に入れて、まだ小さいうちにチップを埋め込む。お前はそのチップをあのおっさんに取ってもらったんだ。ラッキーだ」
マッチは嬉しそうな顔をする。
「俺はチップを調べたんだ。死体処理の仕事が回ってきたときに…。この話はやめとくか。で、これを作った」
ハナビはスタンガンのようなものを手にする」
「こいつがチップの情報を書き換える。チップを調べて色々実験してみたときに分かったことなんだけど、あいつらご主人様たちはストレートに阿呆だ。死んで一定期間たつと、チップは動作を止めるんだけど、もう一度動き出しても、何の問題もないんだ。ただ、データが送られ、スパコンの管理下に入り、仕事が割り振られる。俺はやばくなったら死人のIDに変えてるんだ。もう何人目か分かりゃしない」
寂しげな目をするハナビをマッチはじっと見つめる。
「そして、ご主人様達にとって予想外の事態が起きた」
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